「マフィンづくりで溶かしバターは使いますか?
溶かしバターと、やわらかくしたバターの使い分けがよく分かりません。
パウンドケーキでは最後に溶かしバターを加える方法があります。
マフィンに応用したら、ふくらみが悪くずっしりと重くなってしまいました。
なぜこのようになったのでしょうか?」
受講生さんから質問がありました。
マフィンづくりで、バターの状態が「個体」と「液体」でどう違うか?
違いが出る理由とバターの特性について解説します。
マフィン やわらかいバターと溶かしバターの比較
和モダンフランス菓子のプロコースでは、
「なぜそいうことが起こったのか?」
道筋を立てて自分で考えられるようになることを目指して
製菓理論のレッスンをしています。
今回はマフィンの事例です。
溶かしバターだとマフィンの膨らみが少なく重くなったんです。
事実を元に経験したことを話したい、と思っているので。
質問内容によっては比較検証してからお伝えしています。
やわらかいバターでつくるマフィンの製法
白っぽくふわっとなるまで混ぜ、卵・牛乳などの水分
薄力粉、ベーキングパウダーを混ぜる製法です。
溶かしバターでつくるマフィンの製法
薄力粉、ベーキングパウダーを混ぜ、温かい溶かしバターを
加えて混ぜる製法です。
マフィン やわらかいバターと溶かしバターの比較
焼成中、早くふくらみ始めたのはやわらかいバターの方。
最終的にボリュームはぼぼ同じになりました。
断面を見やすくするためグラシンケースは入れていません。
食感は、やわらかいバターの方がふわっと口の中でほぐれ、
溶かしバターはややしっかりめに感じました。
とはいえ、食べ比べて分かる人はいないだろう、と感じる微差。
膨らみも同じくらい。ほぼ差がでない結果になりました。
講座のレシピでは差がほとんど出ません。
マフィン ネットの一般的なレシピで比較
講座のレシピでは差が出なかったため、
同じ材料を使った、ネットの一般的なレシピで比較してみました。
やわらかいバターのマフィンは、形がドーム状に整ってふくらみ、
溶かしバターのマフィンは、少しいびつでボリュームが少ないです。
ネットの一般的なレシピだと
生徒さんの報告どおりふくらみが少ないですね!
この結果から、どの程度の差が出るかは
レシピのバランスよって異なることが分かります。
バターの特性3つがカギ
溶かしバターだとなぜ膨らみが少ない結果になったか?
を考えるには「バターの特性」を理解していることが必要です。
可塑性、ショートニング性、クリーミング性
順に説明していきます。
バターの可塑性(かそせい)とは?
自由に形を変えられる性質のことです。
バターをグッとと指で押すとへこみますよね。
この性質を利用したお菓子の代表といえば「折りこみパイ」
バターをめん棒でのばす作業を繰りかえして
何百にもおよぶ層をつくります。
バターサンドクッキーの「バタークリーム」を
絞り出せるもこの性質によるものです。
メーカーや種類によって若干の差はありますが、
パイ生地づくりでバターを薄くのばしやすい13℃前後です。
手早くしましょう!といわれるのは、
バターが溶けると可塑性が失われてしまうからなんですね。
作業している間を、常にこの温度帯を保ちましょう!
油脂で変わる!可塑性の温度
お菓子づくりはバター以外にもさまざまな固形油脂を使います。
ラード、ショートニング カカオバター
マーガリン ココナッツオイル…など。
ラード
豚の脂肪です。100%豚脂の純製ラードの他、
他の油脂と合わせたものは「調製ラード」があります。
10~25℃で可塑性を保ちます。
ちんすこう、サーターアンダギーなどの沖縄のお菓子。
スフォリアテッラなどの、イタリアのお菓子
中華菓子にも使われます。
マーガリン
10〜30℃と可塑性の幅が広いため、
初心者さんでも扱いやすい油脂です。
油脂によって可塑性の温度帯は変わります。
バターのショートニング性とは?
でんぷんの粒子が直接、結合するのを防ぐことで、
サクサクとした食感になる性質のことです。
クッキーやタルト生地がサクサク!
もろく口の中で砕ける食感をつくりだしているのが、
この性質によるもの。
いずれも、バターが生地の中にフィルム状になって
散らばるかたさにすることが、サクサク感を出す条件です。
だから、作業中に生地がやわらなくなると
サクサク感がなくなるのですね!
そのために、生地ごとに適したかたさに
バターを調整する必要があるんです。
バターのクリーミング性とは?
バターと砂糖混ぜて「白っぽくなるまで混ぜる」
とレシピでよく見かけませんか?
これはバターに空気を取り込むために行います。
マフィンの生地に取り込んだ空気が、
オーブンの中で熱で膨張し、ふくらむことでふわっと軽い食感になります。
冬場は冷蔵庫から数時間出しておいても、バターが冷たいまま。
ということがよくあり、これでは空気を含みません。
逆に夏場は、すぐにやわらかくなって油が浮いてくることも。
温度が上がりすぎると混ぜても白っぽくなりません。
だから、バターを室温に戻すとあれば、
20℃くらいに調整するんですね。
お菓子づくりの基本なので覚えておきましょう。
マフィンづくりバターを溶かしたら?
バターの3つの性質をふまえて、溶かしバターのマフィンが
なぜ膨らみが悪かったのか?理由を考えてみましょう。
バターを溶かすと、
可塑性、ショートニング性、クリーミング性
3つ全ての特性が失われてしまいます。
つまり、バターを溶かすとバターに空気を抱き込ませる
クリーミング性がなくなるため、
生地がふくらまず、ずっしり重くなったということなんです。
とはいえ、マドレーヌやフィナンシェは
溶かしバターですよね?
実際、マフィンを溶かしバターでつくると、
バターの風味やしっとりとした食感を感じる生地になりました。
これはこれでおいしい!と感じましたよ。
溶かしてもベーキングパウダーの力で膨らみますので
ずっしりし過ぎることもないと思います。
相手にどう感じて食べてもらいか?
「AとB、どちらがいいですか?」
との質問をいただくことがあります。
ですが、わたしがお伝えできるのは
こうするとこうなる、という結果だけです。
どっちが良いかではなく「相手にどう感じて食べてもらいたいか?」
「あなたの意思」大事なんです。
今回の質問1つとっても、
バターの素材学を知らない限り、
いくら考えても答えに辿り着くことはできません。
その答えを導き出す判断材料になるのが
「素材学」「製菓理論」です。
和モダンフランス菓子のプロコースでは、
知識だけ詰めこむのではなく、
レシピと理論を照らし合わせて、自分の場合はどうなのか?
私と答え合わせをしながら、使える知識にしていきます。
人生の再スタートに、
自信をもってお菓子を仕事にしたい方へ。
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所用時間:16:51