ホイップクリームは冷凍できます。
ですが、解凍しても変わらない美味しさを保つには工夫が必要です。
解凍後も生クリームをなめらかに保つ方法、
特に「トレハロース」を使う方法について詳しく解説します。
Q. ロールケーキを冷凍したら舌ざわりに問題が…
「ハピーツスイーツサロン」のメンバーから質問がありました。
生クリームに砂糖を加えて泡立てたクリームをフランス語では
クレーム・シャンティ(crème Chantilly)と呼びます。
以下からは「ホイップクリーム」と書きますね。
このような問題がおきたとき、あなたならどう対処しますか?
ぜひ考えてみてください。
ホイップクリームが冷凍でボソボソになる原因
作りたてのキメ細かくてなめらかな状態を保てなくなる原因は3つです。
原因1 乳化がこわれる
生クリームの水分と油分がうまく混ざっている「乳化」した状態が
冷凍によって崩れます。
乳化がこわれてボソボソした状態が「分離」です。
例えば、液体のままの生クリームは冷凍できません。
分離して泡立たなります。
これと同じ現象が、ホイップクリームでも少なからずおきるのです。
原因2 乾燥
冷凍庫内は乾燥しています。
密閉できてないと冷気がすき間から入って乾燥の原因に。
ひどくなるとヒビ割れることも。
原因3 氷結晶の形成
凍る過程で凍結晶にが大きくなると、
解凍したときにクリームがボソついたり、形が崩れる原因になります。
最小限におさえるためにプロが使うのが「急速冷凍庫」です。
家庭の冷蔵庫でもできるだけ早く凍らせる工夫はできます。
トレハロースで解凍後も滑らかなロールケーキに
おすすめは「トレハロース」の使用です。
✔ 砂糖の一部を置き換えるだけで冷凍耐性がつきます。
✔ スッキリとした自然な甘さでロールケーキの味は変わりません。
✔ 製菓材料店で入手しやすい。
とはいえ、トレハロースを使ったことがないと、
もっと詳しく知りたいですよね。
そこで、特長や効果について詳しく説明します。
トレハロースとは?
トレハロースは、キノコや海藻などに含まれる自然界に存在する糖です。
抽出するのがむつかしく、実用化できないといわれていたところ、
(株)林原(現在はナガセヴィータ)が、1994年に
でんぷんから量産できる技術を発見しました。
これによりコストダウンに成功。
お菓子以外にも、入浴剤などさまざな製品に利用されています。
甘さは砂糖の38%。
「食品添加物」の扱いになりますので、原材料表示に記載する必要があります。
トレハロースの生クリームに対する効果3つ
砂糖の量が13%以上は欲しいところです。
ただ、少し甘くなります。(通常、砂糖の量は8~10%程度)
そこで、効果を発揮するのがトレハロースです。
甘さは控えながら糖度の割合を上げて、冷凍しても安定した状態にできます。
冷凍耐性をもたせたホイップクリームのレシピ
生クリームに対して、砂糖5%+トレハロース10%を加える。
例えば、生クリーム200gに対して
砂糖10gとトレハロース20gを加えるというように計算します。
甘さはどれくらい?計算式
上記の配合でホイップクリームを作った場合、
砂糖を何g入れたときと同じ甘さになったのか、気になりませんか?
以下の計算で分かります。
※トレハロースは、砂糖の38%の甘さです。
砂糖を8.8%加えたのと同じ甘さです。
砂糖とトレハロースをバランスよく配合することで
「冷凍耐性」と「甘さ」のバランスをとりましょう。
機能性をもたせたクリームを使用する
トレハロースを使用せず冷凍耐性をもたせる方法は他にもあります。
各メーカーから冷凍耐性のあるクリームが出ています。
例えば、中沢乳業さんの「ブレンドアップ」や「スマートホイップK」などです。
ブレンドアップ
高脂肪のクリームと1:1で合わせてホイップして使用することで、
保形性、戻り防止、冷凍耐性の機能が向上する。
スマートホイップK
耐酸性、耐冷凍性、耐変色性、耐熱性を備えた高機能なホイップ。
また、冷凍耐性に効果を発揮する添加物も様々な商品があります。
自分のお菓子づくりに最適なものを検討ください。
冷凍ロールケーキの日持ちと保存期間の目安
ロールケーキの冷凍保存は、2~3週間が目安です。
解凍は冷蔵庫で行います。
大きさによりますが、2時間ほどでしょうか。
解凍後はなるべく早めにお召し上がりください。
冷凍保存でお菓子作りの効率アップ
正しく冷凍・解凍ができれば、お菓子の品質はほぼ変わりません。
私自身お菓子を販売するときは、冷凍庫に入る量を考えて
スケジュールを立てます。
冷凍耐性を考えたお菓子づくりの知識をもって
運営の安定化につなげよう。
和モダンフランス菓子のプロコースの理論レッスンでは
「トレハロース」について学べます。
また、お菓子を作って冷凍、解凍、梱包まで安全に届ける知識が身につきます。