「お菓子のレシピで塩ひとつまみ、とあったら必ず入れた方がいいですか?」
との質問が受講生さんからありました。
クッキーは、塩を入れなくても作れますので
入れる意味ってあるのかな? との疑問が出てきますよね。
お菓子づくりにおける塩の役割、有塩バターの代用について
塩を使うタイミング、パティシエが愛用している塩についてご紹介します。
「おいしさ」の仕組みを理解すれば塩が効果的に使えるようになります。
お菓子づくりにおける塩の効果
料理の世界では「塩ふり3年」なんて言われるくらい
使い方は繊細です。
多くの効果がある塩ですが
今回は、お菓子づくりにフォーカスして考えてみます。
味のバランスを整える
グルテンの働きを安定させる
お菓子によっては、たとえ少量であっても
塩が大事な役割をはたしていることがあります。
順番に解説していきます。
味のバランスを整える
塩味をつけるだけではない!ということをお伝えします。
甘味+塩味
クッキーやバターケーキなどに塩味が加わることで甘味がひきたちます。
例えば、おしるこに塩を加えると、甘さが強調されて味がひきしまります。
スイカに塩をふるのも同様です。
このように2つの味があるとき、片方の味でもう一つのの味を
強める作用を「味の対比効果」と呼びます。
甘味+塩の対比効果で、他の素材が引き立ち、
甘味をより感じることで、お菓子全体の味わいが深みがでます。
隠し味なので、加える量はごく少量です。
塩を加える vs 加えない、どちらが美味しいか好みは分かれるところです。
レシピにあっても加えない方が好みなら、意図的に省くことは可能です。
酸味+塩味
塩は酸味をやわらげる効果があります。
レモンに塩を加えると、尖った酸味がまろやかに。
梅干しに塩を加えると食べやすくなるのもそう。
このように、2つ以上の異なる味を混ぜたとき
両方、または片方の味を弱められる効果を「味の抑制効果」と呼びます。
ざっくり言うと、塩のカドがとれるということです。
旨味+塩味
塩を加えるとうま味を感じやすくなります。
塩辛さもやわらぎまます。
例えばしょうゆ。
同じ濃度の食塩水を飲むより、ずっとまろやかに感じます。
塩を入れないパンは、びっくりするほど味が感じられません。
有塩バターは、塩が入ると旨み成分であるアミノ酸を
感じやすくなるので「おいしい」と感じます。
トマトジュースに塩を加えると、酸味をおさえるだけでなく
トマトのうま味成分、グルタミン酸を感じやすくなり
「おいしい」と感じられるのです。
グルテンのはらきを安定させる
小麦粉に水分が入ると、粘りや弾力、つまりグルテンがでます。
お菓子の生地に含まれるグルテンに、塩が加わることで
生地のコシや弾力がほどよく強まって、生地を薄くのばしやすくなります。
この特性を生かしたのが、折りパイ生地です。
塩が入ることで、生地ののびがよくなり
1枚1枚の層がしっかりとしたかたさになります。
お菓子作りで塩を使うシーンは限られますが
その他、微生物が増えるのを抑える防腐効果などもあります。
![さとこ先生](https://atelier-s-liaison.com/wp-content/uploads/2024/01/ホワイト-ベージュ-ナチュラル-お金-ウェビナー-YouTubeサムネイル-8.jpg)
例えば、有塩バターの賞味期限が6ヶ月ほどに対して
食塩不使用バターは4~5ヶ月と短めです。
![生徒さん](https://atelier-s-liaison.com/wp-content/uploads/2024/01/ホワイト-ベージュ-ナチュラル-お金-ウェビナー-YouTubeサムネイル.png)
確かに!塩が入るとバターの保存性も高まるのですね。
お菓子づくりは有塩バターで代用できる?
有塩バターで代用できますか?
塩に関連する質問でよくいただくのでご紹介しておきます。
お菓子づくりでは、基本的には無塩バターを使います。
有塩バター100gあたりは、1.5~1.6 gほどの塩分が含まれています。
海外だと3%くらいのものもあって
よく見ずに買って、塩っぱくてびっくりしたことも。
例えばパウンドケーキのように、バターの比率が多いお菓子を
有塩バターで代用すると、しょっぱくなり過ぎて
味をそこねてしまいます。
そこで無塩バターを使用し、塩は別に加えて量を調整します。
また、個人的な感覚ですが、
「有塩バター」 と「無塩バター+塩」のお菓子を比較すると
同じ塩分量に調整しても、味わいが異るように感じます。
有塩バター独特の、塩味のコクがあるように思うのです。
意図的に使えばお菓子づくりの幅は広がります。
有塩バターと無塩バターを合わせて使うときは?
このテーマでYouTubeライブをしたところコメントがありました。
私はいつも有塩バターと無塩バターを合わせて使っています。
レシピを見ても「塩少々」と書かれてることが多く、
正確に何gかわからず困ります。塩のグラム数が書かれてるレシピの場合には
自分で計算して有塩バターと無塩バターの割合を考えて正確に作っています。
その方法でもよいですか?
塩少々って何g?
![生徒さん](https://atelier-s-liaison.com/wp-content/uploads/2024/01/ホワイト-ベージュ-ナチュラル-お金-ウェビナー-YouTubeサムネイル-11.jpg)
レシピによくある塩「ひとつまみ」「少々」
正確な量がよく分かりません。
つい控えめになって、ほんの少ししかつままなかった
なんてことになると、塩の効果が得られません。
「手ばかり」は道具をつかわず手の感覚で重さなどをはかること。
昔の人は計らなくても身についた感覚で味を決めていました。
自分の指でつまんで何gになるか把握しておきましょう。
2本指でつまんだ場合
約0.5g
3本指でつまんだ場合
0.8~1.2g
ちなみに私の場合は0.8~0.9gくらい。
以前、生徒さんが販売している焼き菓子を試食したとき
本来のレシピより、塩が強く感じたことがありました。
お聞きすると、季節で塩加減をほんの少し多めに変えているとのこと。
確かに、季節や体調、素材も一定ではありません。
0.1gまでスケールではかることも必要だけど
「手ばかり」での感覚をもっていたいものです。
有塩バター+無塩バターは塩分計算をした方がいいのか?
有塩バターと無塩バター組み合わせて使用するのは
いいアイディアですね。
私も有塩バターと組み合わせることはあります。
ですが、味に大きな影響が出るほど入れるわけでないので
特に計算はしてません。
食べてみておいしいと感じるかどうかで
もっと多くしようとか、少し減らそうという感じです。
お菓子によっては、塩の正確な量が大事になることがあるので
数字でしっかり決めていたら、味が安定すると思います。
塩を入れるタイミング
とタイミングを分けて塩をふります。
途中で入れて粒を残す
仕上げにトッピングする
塩の粒が点在して舌に塩味を感じるように作っています。
![](https://atelier-s-liaison.com/wp-content/uploads/2024/03/IMG_9845-500x333.jpg)
おすすめの塩はありますか?
私はお菓子には大体カグの塩を使っています。
という質問をライブ中にいただきました。
塩は自分がおいしいと感じる好みのもので良いです。
お菓子づくりで愛用している塩を3つご紹介します。
ゲランドの塩 微粒
フランス・ブルターニュ半島南部のゲランド塩田で、海水から作られる塩です。
粒の大きさで3種類あります。
顆粒もよいですが、微粒はさらに溶けやすく生地に混ぜ込みやすいです。
フルールドセル
少し大きな結晶になっている粒状の塩です。
ゲランドやカマルグを使っています。
塩キャラメルなどで生地づくりの最後に加えて、
アクセントとなる使い方をします。
ボンボンショコラやクッキーのトッピングにもいいですね。
粟国の塩 天日塩
味のインパクトがありつつ、複雑な旨味とまろやかさを感じる塩です。
和の素材や地元素材を生かすお菓子づくりに使っています。
料理ではおにぎりや、焼いた肉につけても格別です。
その他、地元特産の鳴門の塩は、料理に普段づかいしています。
![さとこ先生](https://atelier-s-liaison.com/wp-content/uploads/2024/01/ホワイト-ベージュ-ナチュラル-お金-ウェビナー-YouTubeサムネイル-8.jpg)
自分が生まれ育った土地の塩は身体にも合うし
地元食材とも相性がいいと思います!
徳島のお隣の、淡路島特産の玉ねぎをオーブンでじっくり焼いて、
淡路島でとれた塩を付けていただいたことがあります。
シンプルなのに、高級店にもひけをとらない味わいに感動!
粒の大きさもさまざま。
あなたの地元で塩があれば、ぜひお気に入りを探してみてください。
お菓子づくりはどっち?精製塩と粗塩の違い
和モダンフランス菓子のお菓子づくりでは精製塩ではなく粗塩、
「自然塩」や「天然塩」と呼ばれるものを使っています。
海水を濃縮してつくるのでミネラル分を含んだ複雑なうま味があり
マイルドな味わいです。
「食卓塩」「食塩」などと呼ばれてる精製されたサラサラの塩です。
海水に含まれているミネラル分が取り除かれています。
レシピと同じ量の精製塩を使うと、
塩気が強く感じるため控えめにしましょう。
お菓子づくりに塩の効果 まとめ
味のバランスを調整する
甘味+塩味 味の対比効果で甘さが際立つ
酸味+塩味 味の抑制効果で酸味がまろやかに
旨味+塩味 旨味が引き立つ
グルテンの働きを強くする
ゲランドの塩 微粒
フルールドセル
粟国の塩 天日塩
このような素材学や製菓理論を知りながら、
地元素材を生かすメニューでお菓子の基礎を知りたい方
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