イギリスでティールーム開業。憧れの裏にあった現実 JURI’S TEA ROOM コラボ対談

オンラインサロンの活動

麻布十番「JURI’S TEA ROOM」の宮脇樹里さんをお迎えして、
YouTubeコラボライブ2回目を開催しました。

イギリス・コッツウォルズでティールームを開業した当時のお話を伺いました。

憧れや「やってみたい!」という気持ちだけで、
突き進むことって、人生の中でありませんか?

私は、よくあります(笑)

でも実際に始めてみると、表舞台からは見えない、
さまざまな現実に直面することになります。

それが海外となると、なおさら。

日本人がイギリスでティールームを開業した理由や、
現地で感じた文化の違い、地元のお客様に愛されるティールームづくり、
本場ならではの食文化など、実体験を交えてお話しいただいています。

動画でご覧になりたい方はこちら

第407回Youtubeライブ
イギリスでティールーム開業。憧れの裏にあった現実

Youtubeライブは、毎週月曜21:30から開催しています。

文章で読みたい方に向けてブログに内容をまとめました。

コッツウォルズってどんな場所?

── イギリスのコッツウォルズって行ったことがなくて、
樹里さんからいただいた写真を見たんですけど、羊や石造りのお家があったり。
絵本の中に出てきそうな素敵な街だなという印象でした。
どのあたりにあるんですか?

樹里さん
私よりも両親のほうがコッツウォルズが大好きで、
好きが高じて父はイギリス政府公認のブルーバッジガイドの資格まで持っているんです。
今、先生が「羊」とおっしゃったんですが、面白いことにコッツウォルズという地名自体、
「羊の丘」という意味なんですよね。「コッツ」は小屋、
「ウォルズ」は古い英語で丘を意味していて、
羊毛で栄えた中世の街並みがそのまま残っているので「古き良き英国」と言われるんです。
一年中緑が枯れないエバーグリーンの地帯で、
なだらかな丘に羊がのんびり草を食んでいる、そんな風景です。

── ロンドンからはどれくらいの距離なんですか?

樹里さん
ロンドンの中心あたりから西へ200kmほどなので、車で3時間ほどです。
コッツウォルズは町の名前ではなく、広域にわたるエリアの名前なんですよ。
地図の中で一つの街として探してしまう方が多いんですが、実は地域全体の総称なんです。

なぜコッツウォルズでティールームを開業することに?

── ロンドンといえば都会のイメージが強いんですが、
なぜわざわざ3時間もかかる場所でティールームを始めることになったんですか?

樹里さん
もともとは父の仕事の関係でロンドンに駐在していたんです。
母が『高慢と偏見(Pride and Prejudice)』などイギリス文学が好きな文学少女で、
コッツウォルズの豊かなカントリーサイドが大好きになり、
週末になると両親はよくドライブに出かけていました。

私は寮生活だったので、休みのたびに帰ると「先週はここに行った、あそこに行った」と、
必ずコッツウォルズの話を聞かされていましたね。
その後ニューヨークに移っても、両親は「将来はあの緑豊かなところに住めたら」
と話していて、それを実現したのが父だったんです。
計画性があったわけではなく、好きを極めていったら夢が叶ってしまった、という感じですね。

日本のティールームとイギリスのティールームの違い

── 私たち日本人が「ティールーム」と聞くと、
女性が優雅に紅茶を飲みながらスイーツを食べて語り合う、ご褒美のようなイメージがあります。
でも実際の現地のティールームはかなり違うんじゃないかと思うんですが、
日本とどんな違いがあるんですか?

樹里さん
一言で言うと、ティールームは「食堂」なんです。
お菓子だけをティータイムに提供するというより、ちゃんとランチも出すし、
日曜日にはサンデーローストのようなお肉料理も出す。
役目としてきちんと食事をお世話する場所なんですよね。
実際、私たちのお店も現地では「JURI’S TEA ROOM restaurant」と、
レストランと明記しないといけませんでした。
日本に持ってきた時に「レストラン」はしっくりこなくて省いてしまったんですが、
本来はしっかり食事を提供する場所なんです。

── 食事も提供すると分かった上で開業されたのですか?

樹里さん
毎週コッツウォルズに通ってティールームに入っていたので、
メニューを見て「お料理も出すんだな」という認識はありました。
でも、その裏側がどれだけ大変なのかは、実際にやってみるまで分からなかったですね。
父が黒板に毎週メニューを書いていたんですが、週末は15種類ほどのお料理を出していました。ケーキも並行して焼いていたので、本当に大変でした。

100席のティールームをたった1人で

── お料理もお菓子も全部お一人で担当されていたということですが、
どんな1日を過ごされていたんですか?

樹里さん
本当に体力勝負でしたね。当時のお店はフロントルーム、レアルーム、コンサバトリー、
そしてテラスガーデンまで合わせると全部で100席くらいあったんです。
全部が一度に埋まるのは年に数回でしたが、そうなると全員分のオーダーが
一気にキッチンに入ってきます。
フロントには地元の中高生が「サタデーガールズ」としてアルバイトに来てくれて、
オーダー取りや配膳をきびきびとこなしてくれるんですが、キッチンはずっと1人でした。
母が手伝ってくれていたとはいえ、開業当初はほとんど1年間、睡眠時間は2時間ほどです。
夜中に仕込みをして、少し仮眠を取ってはまた仕込む、という生活を
若さで乗り切っていました。27歳での開業から1〜2年目は特に大変でした。
3年目からは母が味付けを確認してくれるようになり、助けられていました。

トーストの焼き加減で怒られた話

── 地元のお客様に料理を出すというプレッシャーはありましたか?

樹里さん
ウィンチコムという人口5,000人ほどの小さな町なんですが、
地元のネイティブのイギリス人にイギリス料理を出すというのは、
本当にドキドキするものでした。
特にトーストの焼き加減が分からなくて、最初の頃はいつも
「この焼き方じゃダメ」と戻されてしまったんです。
忙しい時にトースト1枚で怒られることもあって。
日本人の私たちが「ちょうどいいきつね色」だと思う焼き加減が、
イギリスの方にとっては「焼きが足りない」だったんですね。
最後は、これでもかというくらいしっかり焦がして出したら、
「パーフェクト」と言われました。
調べてみたら、トーストの語源は古いラテン語の「トスティウム」で
「焦がす」という意味だったんです。
文化によって「美味しい」の感覚がまったく違うんだなと実感しました。

── 常連さんの好みも、それぞれ細かく覚えていらっしゃったんですか?

樹里さん
そうなんです。ローストビーフも、しっかり焼いてほしい方もいれば、
少しピンクが残るくらいがいいという方もいて、その方が来る日を想像しながら
焼き加減を調整していました。
「今日この方が来る時にはキャロットケーキを絶やしてはいけない」というように、
お客様一人ひとりの顔と好みが今でも浮かびます。
お気に入りのものがないと、それだけでがっかりして帰ってしまわれるんですよね。
「今日はないの?」と言って、そのまま帰ってしまう。
日本のお客様なら「残念だけど今日はこっちに挑戦してみよう」となることも多いですが、
イギリスのお客様ははっきりと意思表示されるんですよね。
好きなものが決まっているとまっすぐ求めてくださるので、分かりやすくもありました。

常連さんとの絆、街の顔になったティールーム

── 同じ方が定期的にいらっしゃる、という感じだったんですか?

樹里さん
はい、席も決まっていて、「あの方はテーブル4番」というように、
特等席のような存在になっていました。
地元に密着したお店でしたが、もちろん観光のお客様もいらっしゃいましたよ。
イギリスの冬は3時半頃から薄暗くなり始めるんですが、そのティータイムになると
「街には誰も歩いていないのに、どうしてこんなにティールームに人が集まるんだろう」
というくらい、皆さんが集まってきてくださったんです。
家でもお茶は飲めるのに、わざわざ足を運んでくださる。
ありがたいことに、街の顔のような存在にさせていただけたのが本当に嬉しかったです。

コッツウォルズという土地の豊かさ

樹里さん
コッツウォルズはロンドンの台所とも言われていて、
一流レストランに食材を卸す生産者の方もたくさんいらっしゃいます。
政治家や舞台俳優、芸能人、地元に根付いて暮らす方まで、
本当にさまざまな方がいらっしゃる土地でした。
週末になるとサイクリストの方々が丘を登ってきて、
ティールームでお茶を一杯楽しんでからまたサイクリングを再開される、
なんて光景もよく見ていましたね。

── 緑豊かな風景の中でサイクリングをしてお茶を飲む……なんて豊かな暮らしなんでしょうね。
イギリス人のお客様に鍛えられながら、地元に根付いたティールームを
作り上げていった樹里さんのお話、いかがでしたでしょうか。

3回目コラボライブは8月10日

樹里さんとのコラボライブは3回に渡ってお届けします。

次回はいよいよ、日本に帰国されてから、イギリスでの経験を
今のJURI’S TEA ROOMのお菓子作りにどう活かされているのか、
こだわりの部分を深掘りしてお伺いします。どうぞお楽しみに。

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1回目のコラボライブの記事はこちらからご覧になれます。

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プロフィール
お菓子づくりのプロを育てる専門家
とくもと さとこ

お菓子教室Atelier S Liaison(2006年開業)主宰
のべ3800人以上を指導
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