パイ生地について生徒さんから質問がありました。
「製菓学校を卒業して、働き始めたお店でフォンセとブリゼの
両方のレシピがあって、それぞれ別モノという認識が根底にありました。
だからいろいろ説明を聞いても頭に入ってこず、
聞いても調べても結局よくわからないままにしてしまっていました。
フォンセ、ってなんでしょうか?ブリゼ生地の別の言い方、みたいな感じなのでしょうか?
この二つの区別がよくわからないです。」
練りパイとか、ブリゼパイ、フィユタージュとか、いろいろ書かれていて。
名前はよく聞くけど、違いって何?そもそもそれって何?…みたいに
頭の中でごっちゃになって、よく分かってないです。」
そこでパイ生地の種類の区別が明確になるように、
違いや特徴を分かりやすくお伝えしたいと思います。
パイ生地は大きく分けて2種類ある
パイ生地を調べていると、色んな言葉がでてきて。
分類が分からず混乱しています。
パイ生地は色んな呼び方がある上に、
本によっても異なることもあります。
ごっちゃになりますよね。
製法を違って覚えていたことが私にもありました。
頭を整理しておくと、人に上手く伝えられるようなります。
お菓子によって使い分けて、思い描く食感が表現できるようになりますよ。
それぞれの特徴を確認していきましょう。
練り込みパイ生地とは?
練り込みパイ生地は塩味の生地と甘い生地があります。
甘い練り込みパイ生地 =パート・サブレ/パート・シュクレ
つまり練り込みパイ生地は3種類あります。
甘みのない練り込みパイ生地
パート・ブリゼ(pâte brisée)と呼ばれます。
別名 パータ・フォンセ(pâte à foncer)とも言われます。
ブリゼ生地(pâte brisée パート・ブリゼ)とは
キッシュ、タルトタタンの生地です。
アーモンドクリーム+フルーツを詰めて焼き上げるタルトと相性がよく、
特にチェリーパイなどの水分の多いフルーツタルトや、チーズタルトに使うこともあります。
ブリゼ=砕けたという意味。
ザクっとした歯ごたえともろく崩れる食感の生地です。
小麦粉に冷たいバターを米粒大に刻んでそぼろ状にする。
冷水を加えて練らないように上から押さえて重ねて合わせるようにまとめます。
ポイントは、練らないこと。
グルテンが出ると食感が悪くなったり焼き縮みにつながるからです。
「ブリゼ生地」と「フォンセ生地」の違い
パータ・フォンセ(pâte à foncer)の
フォンセ=生地を敷き込む という意味。
タルトなどの型に敷いて使う生地の総称。甘くない生地をさします。
フォンセ生地とブリゼ生地の区別が分かりません。
パート・ブリゼとほぼ同じものだと捉えて教室ではパター・ブリゼに統一しています。
フランスの製菓学校で学んだレシピや、手持ちのフランスの専門書では、
パータ・フォンセと記載されているものが多かったです。
製法はブリゼと同じです。
ブリゼの表記がないのでブリゼ生地にあたると思われます。
フランスの製菓学校の本や、日本のフランス菓子の専門書にあった
パータ・フォンセには卵黄が入っていました。
実際、プロの現場などで区別して呼ぶケースも見られます。
パータ・フォンセとして知ったレシピをそのまま受け継いだり、
卵黄入りレシピをパータ・フォンセと呼んで区別されていることも考えられます。
甘い練り込みパイ生地
パート・サブレ(pâté sablée)、パート・シュクレ(pâte sucrée)
の2種類で、製法や食感がことなります。
どちらもタルトの土台、レアチーズケーキなどの底生地、
型抜きクッキーとしても楽しめます。
サブレ生地(pâté sablée パート・サブレ)とは
サブレ=砂で覆われた の意味。
ほろほろ、サクサクした食感で、パート・シュクレに比べて
口の中でもろく崩れる口溶けのよい生地です。
小麦粉、砂糖に冷たいバターを入れて細かく刻み、サラサラの砂状にする。
卵を加えてひとまとめにする。必要に応じてフラゼする。
素材どうしのつながりがゆるいため、グルテンが抑えられて
パート・シュクレよりもろいのが特徴です。
シュクレ生地(pâte sucrée パート・シュクレ)とは
シュクレ=甘いの意味
砂糖が入った甘いクッキー生地です。
サクッとした食感で、パート・サブレに比べて
歯ごたえがある少し固めの質感になります。
タルトを切り分けたときに、ボロボロ粉々にならずカットできます。
室温にもどしたバターに、砂糖をすり混ぜて、卵、小麦粉を順に加えて、
ひとまとめにする。必要に応じてフラゼ(手のつけねで台にこすりつける動作)する。
バターの配合が多め。製法では最初にバターをクリーム状にするのが、
パート・サブレと異なる点です。
折り込みパイ生地とは?
折り込みパイ生地をフランス語でフィユタージュ(feuilletage)と呼びます。
ひと口にパイ生地といっても3種類あるんです!
フィユタージュ・オルディネール(普通の折りパイ生地)
フィユタージュ・アンヴェルセ(逆折り込みのパイ生地)
速成の折りパイ生地(フィユタージュ・ラピッド)とは
ラピッド=早い という意味。
速成パイ、即席パイ、アメリカンパイなどと呼ばれます。
早く短時間で作れます。
他のパイに比べてやや固く、層が不均一ではありますが、
よく浮いて、サクサクします。
例えばアップルパイなど、水分の多いフルーツと合わせても
食感が失われにくいメリットもあります。
小麦粉に角切りバター、塩、水を加えてざっくりまとめる。
帯状に長くのばして繰り返し折る。
バターを減らした折パイ生地の、速成折りパイレシピは、
ガレット・デ・ロワの動画レッスンで学べます。
こちらのネットショップから購入いただけます。
折りパイ生地に苦手意識があった方も、
「これなら作れる!」とのお声をいただいています。
基本の折りパイ生地(フィユタージュ・オルディネール)とは
オルディネール=普通の という意味。
普通のパイって呼ぶと、日本語的に響きが微妙ですが、
正統派の作り方をする、基本の折りパイ生地のことです。
サクサク、ハラハラ口溶けも浮きもよいスタンダードなパイ生地。
すべてのパイ菓子に幅広く使えます。
小麦粉、塩、水でデトランプという生地をつくり、バターを包みこみます。
帯状にのばして折る、を繰り返します。
三つ折り・四つ折りがあり、折り方と回数は仕上がりイメージによって変わります。
逆折り込みの折パイ生地(フィユタージュ・アンヴェルセ)とは
アンヴェルセ=逆にする の意味
基本のパイ生地とは逆に、バターでデトランプを包んで折ります。
特徴的なのはその食感!
ハラハラと繊細にな食感と、バターの豊かな風味が感じられます。
アンヴェルセのパイ生地が、個人的には好みに感じました。
パイ生地そのものの美味しさを存分に楽しむお菓子に向いています。
バターに小麦粉を合わせて成形し、少しやわらかめのデトランプで包みこむ。
帯状にのばして繰り返し折る。
パイ生地の特徴を図で見る
図で確認すると体系的に捉えやすいです。
習わなかったらずっと間違えてやるところでした|生徒さんのお声
受講生さんからメッセージをいただきました。
「ガレット・デ・ロワは動画レッスンどおりに手作業で仕込みましたが、
以前、速成パイ生地の作り方をフードプロサッサーで教わったことがあり、
フィユタージュラピッドと聞いていましたが、
今回のような生地(速成パイ)ではなかったです。
あればブリゼ生地だったのですね。間違いに気づかせてもらえて良かったです。
今回習わなかったら、ずっと間違えてやるところでした。
パイ生地の分類ありがとうございます!分かりやすいです。
言葉だけじゃなくて目で見て分かる方が理解しやすくて、
頭の中でごちゃごちゃしていたのが整理されました!
これで自分でも生地を作る時に迷わずにすみます。
和モダンフランス菓子のプロコースでは、受講いただく中で
「3年モヤモヤしていたことが分かって、スッキリしました!」
「そういうことだったのか!!がたくさんあって楽しい。」
「色んな教室で習ってきて解決しなかったことが、先生と出会って解決できました。」
と言っていただいてます。
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