発酵バターでお菓子の味は変わる?普通バターとの違い&6種比較で徹底解説

製菓理論

お菓子のレシピで「発酵バター」と書かれているけれど、
普通のバターと何が違うんだろう?
と思ったことはありませんか。

この記事では、発酵バターと非発酵バターの違い、
どんなお菓子に向くのか、
そして6種類の発酵バター
(四つ葉・明治・カルピス・高千穂・タカナシ・エシレ)
を比較した結果をお伝えします。

発酵バターの質問

お菓子づくりで発酵バターを使ったのは初めてです。
普通のバターと違いますか?どのように使い分けていますか?

お菓子のプロコースの実習中に質問がありました。
この回では発酵バターをお届けしていました。

はじめてつかうときに、あれ?と感じたのは
「香り」ではないでしょうか。
混ぜている時に、普通のバターと違う香りがするんです。

発酵バターを使ったことがない方へ
何が普通のバターと違うのか詳しくお伝えしますね。

バターとは?

牛乳の乳脂肪(クリーム)を集めて練り固めたものです。

バター4つの分類

塩を添加するかしないかで…
「有塩バター」「無塩バター」に。
乳酸菌で発酵するかしないかで…
「発酵バター」「非発酵バター」に分けられます。

つまり、4種類あるわけです。

発酵バターはどこで買える?

日本で多く流通しているのは、有塩の非発酵バター。
スーパーに、発酵バター(450g)は普通は置いていませんので
製菓材料店で購入くだい。

発酵バターはヨーロッパでは主流

日本で馴染みが少ないですが、
ヨーロッパでは発酵バターが主流なんです。

なぜ発酵バターなのか?

冷蔵庫がなかった時代のヨーロッパでは、
ミルクの中にある成分が、乳酸菌の働きで自然に発酵して、
酸味のあるクリームができたと言われています。

この発酵したクリームをかき混ぜて
脂肪分をあつめたのが「発酵バター」です。

こうした製法が長くつづいたため
ヨーロッパでは発酵クリームから作る
「発酵バター」が古くから親しまれてきたそうです。

フランスのバターはコク深く、でもスッキリ?

かんだ瞬間、バターがじゅわ~と染み出てくる
「クイニーアマン
フランスのブルターニュ地方で味わった地方菓子です。
濃厚なバターの風味は衝撃でした。

罪深いな~なんて思いながらも、
塩気があと引くんです。

乳製品が違うとこんなにもお菓子の風味が
変わるのかと驚きました。

画像はブルターニュで見かけた「ボルディエのバター」
バターを木べらで叩いて成形して、包装しています。

フランスのバターはコクがありながらも、
クセは少なくてスッキリした印象です。

発酵バターと非発酵バターのちがい

発酵バターとは

乳酸発酵によって独特の芳香が生まれます。
バターに鼻をちかづけてみてください。
ヨーグルトのようなほのかな酸味を感じる香りがするはず。

お菓子に使うと、バターのコクや深みが増して、
発酵バターならではの豊かな香りがします。

発酵バターの作り方

発酵バターの製法は2つあります。
乳酸菌を「どのタイミングで加えるか」の違いです。

クリームを発酵させる方法
原料となるクリームに乳酸菌を加えて乳酸発酵させ、バターへ加工する方法

バターを発酵させる方法
バターを作った後に乳酸菌を練り込み、乳酸発酵させて仕上げる方法

バターができるまでの工程の、どの時点で加えるかによって
風味に違いが出ると言われています。

非発酵バター(普通のバター)とは

一般的に、バターと呼ばれている、普通のバターをさします。
生乳の乳脂肪を分離させせて取りだし、練り上げたものです。

発酵バターに比べてクセがなく、コクがある味わいなので。
どんなお菓子にもオールマイティ―に使えます。

日本だけでなくて、アメリカやオーストラリアでも
非発酵バターが主流と言われています。

発酵バターが向くお菓子

バターの香りを主役にしたいお菓子におすすめです。

ガレットブルトンヌや、サブレなどのクッキーや、
フィナンシェ、マドレーヌのような、
シンプルなお菓子が向いています。

ヨーグルトみたいな酸味は、
加熱すると消えて芳醇な味わいに変わります。

また、キャラメル風味のお菓子にはよく合います。
画像はブルターニュで買ったキャラメル。
発酵バターもよく合うと思います。

発酵バターを使うときの注意点

発酵バターを使えば、どんなお菓子もおいしくなる!
と思われがちですが、実は気をつけたいこともあります。

発酵バターが苦手な人もいる

発酵バター独特の香りが苦手な方もいます。

バターは酸化しやすく、時間がたつと風味が変わりやすい素材。
発酵バターが酸化してくると「酸化臭」
が不快に感じられることもあります。

つまり「万人受け」するわけではないんです。

副素材の風味を消す可能性がある

風味が強いため、フルーツや抹茶・ココアなどの
繊細な素材の風味を打ち消してしまうことがあります。

私は抹茶などを使ったときは、発酵バターは選びません。
せっかく使うから、発酵バターの風味をいかせる
お菓子で使うほうが、その良さが際立つからです。

原価が高くなる

バターの価格って、どんどん高騰していますよね。

たとえば折りパイ生地のようにバターをたっぷり使うお菓子は、
どうしても原価が上がってしまいます。

家庭で作る分には、好きな材料でよくても
販売となると原価を考える必要があります。

例えば「ここぞ」という特別なイベントの時だけ
いつもの焼き菓子を、発酵バターに変えてみるとか。
効果的に取り入れてみるのもいいですね。

風味が劣化しやすい

発酵バターは非発酵バターと比べて
風味の劣化が早い傾向があります。

保管するスペースのことも考えて購入し、
開封後はできるだけ早めに使い切りたいですね。

バターは冷凍保存した味が落ちる?

生徒さん
生徒さん

バターは冷凍保存したら
味が落ちてしまいますか?

コミュニティで発酵バターのセミナーを開催したときに、
このような質問がありました。

そんなことは全くありません!
開封したまま冷蔵庫に長く置いておくほうが、
かえって風味が落ちてしまいます。

私は、使わない分はしっかり密封して冷凍保存しています。
使うときに必要な分だけを冷蔵庫に移して解凍すると、
よい状態で使うことができます。

メーカーごとの発酵バターの違い

お菓子づくりでよく使われる発酵バターを、
6種類選んで比較してみました。

あくまで私自身が味わって感じた印象なので、
人によって感じ方は違うと思いますが、
参考としてまとめておきます。

四つ葉発酵バター

やや黄色っぽい。
香りが強く、食欲をそそる酸味のある香り。
ミルクの風味をしっかり感じました。

明治発酵バター

やや黄色っぽい。
ツンとした鼻にくる酸味があって香りが最も強かった。
濃厚で独特の風味を感じる。

カルピス発酵バター

色が最も白い。ほのかな酸味が感じられて
穏やかでクセのない香り。
上品で後味がクリーミー。

高千穂発酵バター

白っぽい色。
ほのかな酸味が感じられて、優しい印象でクセがない。
食べるとコクがあってミルク風味が鼻に抜ける。

タカナシ発酵バター


Brise de mer BEURRE FERMENTE
(ブリーズ・ドゥ・メール ブール フェルマンテ)

という名前のバターです。
形が違いますが、他と同じ450gです。

最も濃い黄色。
香りの強さは中間で、酸味を感じる上品な香り。
口にいれた瞬間にスッと溶けて口溶けがよい。
後味がすっきりしている。

エシレバター

フランス産の発酵バターになります。
有塩(DEMI-SEL)しか手に入らなかったのですが…。

黄色が濃い。
ほのかな酸味があって、乳製品のコクを感じる香り。
ミルクの風味が強くて濃厚。口溶けがよくスッキリしています。

バターの色の違いについて

バターの色が鮮やかな黄色だったり白い理由は、
牧草に含まれるカロチノイドという色素によるものです。

カロチノイドは、牛乳の中では脂肪を包む膜の中にあるため、
普段は外からは見えません。
けれども、バターを作るときに膜が壊れて脂肪が出てくることで、
はじめて黄色があらわれます。

春夏に新鮮な牧草を食べた牛のミルクはカロチノイドが多く、濃い黄色に。
冬は白っぽく薄い色になると言われています。

ガレット・ブルトンヌで比較

ガレット・ブルトンヌとは?
ブルターニュ地方に伝わるバターをたっぷり使う
厚焼きのクッキーです。サクッとした食感と
ほろっと崩れる口どけ、バターの香りの豊かさが特徴です。

四つ葉、タカナシ、高千穂、明治、カルピスの発酵バターで
比較しました。(エシレは有塩なので省いています)
結果、香りや風味の点で違いがでました。

見た目

発酵バターによる差は感じられませんでした。

食感

タカナシ発酵バターの食感は、
サクッと繊細に崩れて口溶けが良く、他と食感が違った。
その他は差を感じられませんでした。

香り・風味

四つ葉と、明治が、バターの香りが最も強いです。
明治は少し独特の個性的な香りがしました。

カルピスは上品な印象で香りはやさしい。
高千穂・タカナシは、クセがなく香りの強さは中間でした。

とはいえ、本当に微差です。
発酵バターならではの濃厚な深いコクをどれも感じます。

まとめ|発酵バター

発酵バターは、原材料となるクリームに
乳酸菌を加えて発酵させたバター。
お菓子に使うと、バターのコクや深みが増して、
発酵バターならではの豊かな香りになる。

向くお菓子は、バターの香りが主役にしたお菓子。

6種類の発酵バター(四つ葉、明治、カルピス、高千穂、タカナシ、エシレ)
を比較したところ、色や香りや風味に違いがある。
ガレットブルトンヌを作ると、香りや風味で違いが出た。

LINEで特典を受け取る
メルマガに登録する

 

プロフィール
お菓子づくりのプロを育てる専門家
とくもと さとこ

お菓子教室Atelier S Liaison(2006年開業)主宰
のべ3800人以上を指導
地元素材を使った「和モダンフランス菓子」
お菓子のプロを目指す方に
製菓理論とお菓子の基礎を学べる講座を提供
動画教材制作クリエイター

とくもと さとこをフォローする
製菓理論
地元素材×和モダンフランス菓子を、製菓理論から学べる商用OKのマンツーマンお菓子講座|アトリエ エス リエゾン(徳島・オンライン)
error:
タイトルとURLをコピーしました